2024.09.25
取り組み事例
LIPNews 株式会社ストラソルアーキテクト 株式会社APT 株式会社シーアールイー
【連載】第23弾:自動倉庫がベストとは限らない!トラブル時にも柔軟に対応!中小機械卸の物流課題を解決する“半自動化”~物流インフラプラットフォームNews~
こんにちは! シーアールイー(以下CRE)マーケティング部です。
過去に導入した倉庫の運用に課題はありませんか?長期間の使用で不具合が発生したり、現在のビジネス環境に合わなくなったりはしていないでしょうか。
導入当初は最先端だったマテハンも、老朽化によって様々な問題が発生し、アップデートのタイミングを迎えているかもしれません。
今回の記事で紹介するのは、2024年に倉庫を移転し、老朽化した自動倉庫をDAS(Digital Assort System:デジタルアソートシステム)と平置き棚に置き換えてオペレーションを刷新した東京硝子器械株式会社様。APT社×SSA社×CRE社のグループ企業3社の強みを生かした、倉庫リニューアルの提案事例です。
<今回お話をお聞きした方>
東京硝子器械株式会社(以下 東京硝子器械)
代表取締役社長 白井 一夫 氏
(株式会社T・G・K 代表取締役 兼任)
株式会社T・G・K(以下T・G・K)
センター長代理 町田 涼一 氏
管理部長 難波 康一 氏
株式会社APT(アプト、以下APT)
代表取締役 井上 良太 氏
ソリューション開発本部 つなげる部 谷原 智朗 氏
株式会社シーアールイー(以下CRE)
ソリューション戦略ユニット 戦略推進部 シニアマネージャー 鶏内 明夫 氏
以下敬称略
<目次>
- 繊細なガラス製理化学機器を扱う東京硝子器械株式会社
- 自動倉庫の老朽化によるトラブルの多発!出荷トラブルは営業部門のモチベーションも下げる
- すでに取引があったことに驚いた!CREへの問い合わせが課題解決のスタート
- 導入の決め手は「いざとなれば人手で出荷できるDAS!」
- 倉庫移転に伴う在庫管理を円滑にするシステムも提案
- マテハンありきではなく経営目線で課題に向き合う
繊細なガラス製理化学機器を扱う東京硝子器械株式会社
白井(東京硝子器械) ー 弊社はその名のとおり実験や試験に使われるビーカーやフラスコなどのガラス製品をはじめ、さまざまな理化学機器、試薬などの卸売を行っています。
商品の納入先は国や大学の研究機関、医歯薬関係機関、製造業の研究開発部門・品質管理部門・工場などのユーザー様です。商品数は全体で約8万点、そのうちガラスに関わるものは約4割ですね。
東京硝子器械の物流を担っているのが、関連会社の株式会社T・G・Kです。T・G・Kでは、商品特性を考慮した保管や輸送などを行っています。例えば、商品を発送する際は、破損を防ぐために、ガラス同士が接触しないように二重梱包して輸送しています。また、試薬などは保管環境によって品質が劣化しない様に、温湿度管理を行い適度な状態を保つようにしています。
―― 続いて東京硝子器械様の課題解決を担ったCREグループについてお聞きします。今回はAPT社、SSA社、CRE社のグループ企業3社でトータルソリューションを提供されたのですね。
井上(APT) ー APT代表取締役の井上です。おっしゃるとおり、CREのグループ企業3社で今回のプロジェクトに取り組みました。APTは、CREグループの一員として倉庫の自動化や効率化、省人化の課題解決に取り組んできました。今回のプロジェクトでは、自動倉庫の設計やマテハン/WMS導入と実行のマネジメント、請負工事を担当しました。
鶏内(CRE) ー CRE戦略推進部の鶏内です。弊社は物流不動産分野を軸として、物流プラットフォーム事業を展開しています。全国各地に大型の物流センターを建設し、荷主様やテナント様の物流課題の解決に取り組んでいます。
東京硝子器械様のプロジェクトでは全体調整を担当しました。また新しい倉庫としてGLP流山をご提案し、移転先選定をサポートしたのが弊社の役割です。
なお、今回のインタビューには株式会社ストラソルアーキテクト(以下SSA)社は同席していませんが、SSAはプロジェクトマネージャーとして倉庫移転関係全般を担当しました。SSAの強みは上流工程の業務分析で、今回は分析に基づいて倉庫リニューアルプロジェクト全体の統括と、全体工事の差配などを担っています。
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自動倉庫の老朽化によるトラブルの多発!出荷トラブルは営業部門のモチベーションも下げる
―― 東京硝子器械様が抱えていた課題について、お聞きしたいと思います。まず経営者として移転前の倉庫にどんな悩みを持っていたのか、お話しいただけますでしょうか。
白井(東京硝子器械) ― 一言で申し上げると、老朽化した設備への対応です。2005年に東京の江戸川区平井に物流センターを開設して約20年が経過していました。老朽化したシャトル型自動倉庫仕分システム(以下:自動倉庫)のトラブルによって出荷が止まってしまうケースが頻発していたのです。
長い時には丸一日出荷ができないこともあり、営業部門ではお詫びやクレーム対応、イレギュラーな発送対応に追われていました。
お客様からの信頼を毀損するだけでなく、営業部門のモチベーションを著しく下げていたのです。
自動倉庫が止まる頻度があまりにも多いので、ファックス送付用のお詫び状を常備していたほどです。経営者として「各部門の責任を果たして会社を成長させよう」と唱えながら、売上をもたらす営業部門に後ろ向きの仕事をさせて、やる気を削ぐような状況を解決せねばなりませんでした。
ECサイトでは在庫状況を開示していたので、「モノがあるというから注文したのに、届かない。明日の実験に使うのにどうしてくれるんだ!」というお客様からのお叱りも受けましたね。
―― 当時の現場の運用状況について教えていただけますか。
町田(T・G・K) ー 仕分けに利用している自動倉庫に出荷業務を依存しており、ここがエラーを起こすと全ての出荷が止まってしまう状態だったのです。すでに自動倉庫のサポート期間も切れており、原因究明が困難でした。止まったと思ったらいつの間にか復旧していることもあり、なんとか騙し騙し使っていたのが実態でした。
止まってしまった時は、社員が棚にのぼり人手で取り出して仕分けと荷合わせをするーー「なんのための自動倉庫なんだ……。」という状態でした。
導入当時は最新だったWMSも、現在のビジネス環境に合わなくなっていました。WMSの仕組みに無理やり現在のオペレーションを合わせるような状態になっていましたね。
―― 「足の大きさに靴を合わせるのではなく、サイズが合わない靴に足を無理やり合わせる」ようなイメージでしょうか……。
町田(T・G・K)ー まさにそうでしたね(笑)。
すでに取引があったことに驚いた!CREへの問い合わせが課題解決のスタート
―― 東京硝子器械様とCREグループの最初の接点について教えてください。
鶏内(CRE) ー T・G・K様から「物流の悩みがあるので相談したい」とCREにお問い合わせがあったことがきっかけです。まずは親会社の東京硝子器械様にお伺いして、カジュアルな打ち合わせから始めました。話を進めていくと、東京硝子器械さんとAPTにはすでにT・G・KのWMS導入を通じて取引があることが判明。白井社長に「APTさんは関係会社なの?うちはずっとお付き合いがあるよ!」と言われて、びっくりです(笑)
白井(東京硝子器械) ー APTさんとは、T・G・Kを設立した約15年前から当社のWMSに関してお付き合いがあったんですよ。
今回のプロジェクトでは、当時利用していた平井の倉庫を「継続して使うか否か?」から検討を始めましたね。その際、 我々が懸念したのは「引越し」のことでした。
―― 「引越し」の懸念とは具体的にどういったことでしょうか。
白井(東京硝子器械) ー はい。倉庫移転時の在庫の移動です。以前、倉庫を移転した時の大混乱がトラウマになっていました。移転のために棚から出した商品を戻す作業がうまくいかず、翌日の出荷に引き当てられない、ピッキングができないといったトラブルが発生したのです。今回も同様なことが起こるのではないかと……。
―― CREグループは東京硝子器械様のお悩みに対してどのような提案をされたのでしょうか。
鶏内(CRE) ー 費用対効果とマテハンから考えた際のメリット、デメリットを考慮しながら、大きくプランA、プランB、プランCの3パターンを作成しました。さらにプランCは松と梅に細分化されます。
―― 松竹梅の「松」と「梅」ですね。合計4つのパターンについて、具体的な提案内容やそれぞれの特徴について教えていただけますでしょうか。
鶏内(CRE)ー それぞれにかかるコストとSSA の業務分析の結果を掛け合わせ、プランを分けました。まず大きな判断は、平井の倉庫を継続利用するか否かの2パターンです。次にどのようなマテハンを利用するかの視点で、移転ありパターンと移転なしパターンを細分化していきました。
プランAは平井センターでの運用を継続します。マテハンについては自動倉庫を撤去して平置・デジタル仕分を採用します。
プランBも、平井センターでの運用を継続します。こちらはセンターを再構築し、新規マテハンを導入する案です。具体的にはシャトル台車によって入出庫を行うシャトル自動倉庫と平置き棚、さらに流れる商品を退避させるバッファラインと仕分けを行うソートラインのコンベヤを採用します。
次に、プランCはセンターを移転する前提の案です。プランCのうちで「松」と「梅」に分類しました。
プランC「松」は新拠点に移行し、新規マテハンを導入する案です。マテハンはシャッターアソートシステムと平置き棚、さらにバッファラインとソートラインのコンベヤを採用します。新拠点として、GLP流山を提案しました。
プランC「梅」もGLP流山に拠点を移転し、新規マテハンを導入します。違いは設備面で、マテハンは平置き棚と高層保管棚、DAS(デジタルアソートシステム)を採用します。
―― 結果的に東京硝子器械さんは、どのプランを採用されたのでしょうか。
白井(東京硝子器械)ー DASを活用した、プランC「梅」を採用しました。
導入の決め手は「いざとなれば人手で出荷できるDAS!」
―― 決断の決め手になったポイントについて教えてください。
白井(東京硝子器械)ー 今回採用したプランは、平置き棚とDASを組み合わせた半自動のシステムのため、マテハンが止まっても人間の手で出荷を継続できる点がポイントです。
さらに、複数のプランを提案いただいたことも大きいですね。自動倉庫を使う/使わない、倉庫を移転する/しないと選択肢を絞っていく中、CREさんたちは私たちが対応すべきことを明確にした資料を提示してくれました。CREさん側でユーザー見学やシミュレーションを見学する機会を提供してくれたのもありがたかったです。
コンサル会社やベンダーにありがちな「全部盛り」の過剰なプランだけの提案じゃなかった点も、好印象でしたね。弊社のような中小企業にとっては、かゆいところに手の届く施策でコスト効率を最大化したいところです。そういうニーズも的確に汲み取っていただけました。
―― 今回は人が介在するシステムにする判断をされましたが、物流の領域は人材不足です。人手が必要なシステムは後々課題が発生しないのでしょうか?
白井(東京硝子器械)ー その点については、必要に応じて人手を手配できると考えています。DASのシステムは、繁忙期の物流波動に合わせてスタッフの増減で柔軟に対応できるからです。我々にとっては、オペレーションを止めないことの方が人の手配よりも優先順位が高いと判断しました。
―― ところで、今回のプロジェクトでは単純な設備のリプレースだけではなく、上流工程の分析も行われましたね。そういったプロセスが入っていたメリットは感じましたか?
難波(T・G・K) ー もちろん。SSA さんに業務分析をしっかり行っていただいたことも最適な判断の後押しになりました。業務や工程を要素分解して必要な工数や人数、時間を分析し、提案資料を作っていただきました。
白井(東京硝子器械)ー SSA さんの業務分析によって、自動倉庫よりも平置き棚でオペレーションする方が効率がいいことがわかりました。逆に、自動倉庫を導入せずともオペレーションできることがわかってしまった。極論、なぜ今まで自動倉庫を使っていたのだろうと…(笑)
大ロット少品種であれば自動倉庫の方が生産性が上がるのでしょうが、当社が取り扱う商品は小ロット多品種なので。自動倉庫だと入出庫の出し入れの頻度が高くなって、そのぶん動線が長くなり、時間がかかってしまうのです。
―― 判断に際しては、将来の拡張性も考慮されましたか。
白井(東京硝子器械)ー 平井センターではスペース上、保管能力の限界がありました。一方で保管能力の限界を上げるため、マテハンを導入すると、今度は投資コストが問題となってしまうのです。そのため、保管スペースとコストのバランスを考慮するとGLP流山への移転が適切と判断しました。
倉庫移転に伴う在庫管理を円滑にするシステムも提案
―― 白井社長が懸念されていた、倉庫移転に伴う在庫移動の課題について、CRE側でどのように解決されたのでしょうか。
谷原(APT) ー 商品の移動を間違いなく行える仕組みを開発、ご提供しました。
具体的には平井センターの商品をスキャンすると、移動先のGLP流山のロケーションや移動数量を明記したラベルが発行されるように設計しました。引越し業者がこのラベルを見るだけで、大枠で移動先がわかるようになっています。
意識したことは、担当者が誰であっても正確な在庫移動の作業を行えるようにしたことですね。また、平井センターの自動倉庫には出荷予定の在庫があるので、こうした在庫のロケーションをどのように定義するのかも細かく設定しました。
さらに、動きが大きい商品とそうでない商品を分類して、移動の優先順位をつけました。動きの少ない商品を先に流山のセンターに移動し、最終的な拠点の稼働を早められるよう工夫しました。
―― なるほど。続いてT・G・K様にお聞きしたいのですが、プロジェクト全体で、円滑に進んだ点や苦労された点があれば教えてください。
難波(T・G・K)ー そうですね。CREグループさんが現状分析と課題の設定、物件の選定、システムや設備の設計、移行の支援に至るまで一気通貫で対応してくれたので、大変安心感がありました。荷主である東京硝子器械を含めた連携もスムーズでした。
苦労した面で言えば、大型投資案件としての資金調達でしょうか。
白井(東京硝子器械)ー たまたま東京硝子器械の基幹システムを切り替える時期と近くなったので、トータルの資金需要としては大きくなりましたが、結果的にはむしろよいタイミングとなって、融資も受けやすくなった面もあると思います。
マテハンありきではなく経営目線で課題に向き合う
―― 今回の課題と同様の悩みを抱えている中小企業や中堅企業へアドバイスをお願いできますでしょうか。
白井(東京硝子器械)ー 10年後を見据えた時にリプレースしやすいシステムを採用した方が、良いのではないでしょうか。
私たちがこれまで使っていた自動倉庫のシステムでは、老朽化によるトラブルがアキレス腱となって物流全体が止まってしまう状態に陥っていました。一部の不具合で全体が止まり、事業運営に影響するような仕組み作りは避けた方が賢明だと思います。
―― マテハンなどの設備ありきではなく、まずは上流工程の業務分析も必要だということですね。CREグループさんに中小企業の物流課題の解決に必要な視点についてお聞きしたいと思います。
井上(APT) ー そもそも、なぜ自動化が必要なのかを考える必要があろうかと思います。例えばマテハンメーカーさんに相談した場合、どうしてもその会社の製品に紐付いた提案になりがちです。そうなると、自動化を考えた根本を見失い設備投資を行ってしまう。その結果、過剰な投資やランニングコストが発生するだけでなく、運用に苦慮することにもなりかねません。
例えば、ロボットを導入したいといったお客様は非常に多いです。しかし本当にそれが必要なのかをよくよく深掘りせずに購入され、持て余してしまうケースが最近増えています。購入してはみたけれど、現場ではどうやって使おうかと……。
我々はそうしたケースを多数見てきました。お客様と議論を重ねながら原点に立ち返り、最適なソリューションを提案できることがベンダーフリーの良さだと思います。マテハンありきにならず、経営目線と上流工程の視点を加味したソリューションをワンストップでご提案いたします。
―― ベンダーフリーで最適な提案を行うことができるのが、APT社×SSA社×CRE社のグループ企業3社の強みなのですね。今回のインタビューでは中小企業の物流課題の解決のエッセンスを知ることができました。本日はありがとうございました!!
企業① | 東京硝子器械株式会社 |
企業② | 株式会社APT |
企業③ | 株式会社シーアールイー |