2024.06.11
取り組み事例
LIPNews 株式会社A-TRUCK
【連載】第22弾:「走る冷蔵庫」が大活躍! 野外イベントから災害現場まで駆け付ける冷凍トラックの実力とは~物流インフラプラットフォームNews~
<今回お話をお聞きした方>
株式会社A-TRUCK
取締役 レンタカー担当部長 後藤悠也 氏
<目次>
- 増え続ける生鮮食品の配送ニーズ、対応の切り札は“専用車両のレンタル”
- 物流業界以外でも話題!人々の生活を支える「走る冷蔵庫」
- マーケットインの発想で、高性能な新車種を続々と企画し導入
- 物流インフラを支えるレンタカー会社となるのを目指して
増え続ける生鮮食品の配送ニーズ、対応の切り札は“専用車両のレンタル”
こんにちは!シーアールイー(以下CRE)マーケティンググループです。
物流業界の大きな課題の一つである「物流波動」。季節性や経済動向によって繁忙期と閑散期の物流量の差が波のように激しく変化する中、いかにしてその荒波を乗り切るかは、各社共通の経営課題でしょう。
中でも特に需要の波が大きいジャンルのひとつが、冷凍や冷蔵が必要な荷物の輸送です。暑い時期や年末年始には車両も人も足りなくなるのに、イベントのない閑散期になるととたんに設備過剰に陥り維持費がかさむ……。いかにその差を埋めればよいか、悩みを抱える事業者は多いと思います。
近年は、EC市場において生鮮食品の配送ニーズが顕著に増加しており、今後もその需要は増え続けると予測されています。今後も冷凍・冷蔵品を扱うなら、新たな需要の波にも、どう対応するか早急な検討が求められます。
そんな難題に対しては、A-TRUCK社が提供する冷凍・冷蔵トラックのレンタルサービスが、一つの解となりえます。レンタルなら、需要に合わせて車両の数を適時調整でき、繁忙期への対応はもちろん急なニーズにも素早く対応できるメリットがあります。
冷凍・冷蔵トラックが活躍するのは、実は物流業界だけではありません。
ホテル、飲食チェーン店、野外イベントの会場、建設現場、そして災害現場まで、さまざまな場所に冷凍・冷蔵トラックが駆け付け、「走る冷蔵庫」として活用されているのです。
今回のコラムでは、A-TRUCK社の後藤氏へのインタビューを通じ、冷凍・冷蔵トラックの魅力と、その可能性に迫ります。
物流業界以外でも話題!人々の生活を支える「走る冷蔵庫」
後藤 ー 売り上げとして大きいのは、物流事業者の方々への貸し出しです。コロナ禍によってEC市場が拡大し、物流量も大きく増加したのと合わせて、オンラインで取り扱われる商品の範囲も拡大しました。各個の商品に適した物流ニーズも高まって、急速配送、冷凍や冷蔵といった特殊な需要も伸びています。
それに自社で対応するには、保有する車両の種類や数を増やさねばなりませんが、一方で物流の波動という課題もあり、一気に設備投資に踏み切れる事業者はそうはいません。そこで、需要に合わせ車両をレンタルできないかと、弊社に相談がくるケースが多いです。
取り扱う荷物でいうと、冷凍・冷蔵が必要な商材といえば生鮮食品ですが、それ以外で増えているのが、医薬品です。近年は温暖化が進み、これまでなら常温で配送しても問題なかった医療品の一部は、すでに冷蔵しないと運べなくなりつつあります。
そこでコロナ禍で注目が集まったのをひとつの契機として、配送車両を冷蔵ができる車両へと切り替える会社が実際に出てきています。こうした流れは今後も加速し、弊社にとってビジネスチャンスになるととらえています。
―― 地域としては、やはり暖かい地方のほうが需要があるのでしょうか。
後藤 ー たしかに九州や沖縄といった温暖な地域での需要もありますが、実は北国での利用もまた多いです。冬に外気温がマイナスになってしまうような場合、「常温を保つ」という用途で冷蔵トラックを活用するケースがあるのです。
ただ、だからといって南国や北国ばかりにお客様が集中しているかというと、そういうわけではありません。物流業界以外でも、冷凍・冷蔵トラックの活躍の場はたくさんあり、全国各地にお客様がいます。
―― 物流業界以外だと、具体的にはどんなふうに活用されていますか。
後藤 ー 共通して言えるのは、ただ配送するだけではなく「走る冷蔵庫」としてさまざまなシーンで使われていることです。事例を挙げると、たとえば外食チェーンのとある店に設置されている業務用の冷蔵庫が壊れてしまい、臨時で食材を保存する場所が必要になった時、弊社のトラックをご活用いただきました。
また、インバウンドの影響などで客足が一気に伸び、普段よりも大量の食材を保存しなければならなくなったホテルからのご相談もありました。野外イベントに出店する寿司チェーン店が、一時的に食材を保管する場として使用するなど、イベント関連の貸し出しもよくあります。
飲食以外でいうと、ビルの建設現場で使われたケースもあります。長期にわたる建設作業中、そこで働く人たちの食べ物や医療品を保管していました。その延長上にある活用法が、災害現場での利用です。電気を始めとしたインフラが止まれば、必要な食料や医療品の保存が難しくなります。
そこで「走る冷蔵庫」が被災地に駆け付け、人々の生活を守る手助けをするのです。すでに全国の市町村から災害時の提携のご相談を受けており、弊社としてもしっかりと役目を果たしたいと考えています。
―― そのほかに、近年の利用傾向として特筆すべき点はありますか。
後藤 ー ここ数年で、個人による1日単位での利用が増えています。それこそ災害時にすぐトラックを借りて被災地に向かい、炊き出しを行うような人もいました。他にもユーチューバーが企画で使うなど、思わぬ形の利用もあります。なお個人のお客様のレンタルは小型トラックが中心で、弊社としてもその需要に対応すべく、ラインナップをさらに充実させてきました。
マーケットインの発想で、高性能な新車種を続々と企画し導入
―― あらためて、冷凍・冷蔵トラックにはどんな性能があるのか、教えてください。
後藤 ー 冷凍・冷蔵トラックは、冷凍食品や生鮮食品など保冷が必要な物を適切な一定の温度に保ったまま運搬するのが可能な車です。その主な仕組みとしては、エンジンの力でコンプレッサーを動かし庫内を冷却しています。温度設定は、運ぶ品物の用途に合わせて細かく設定できます。一般的には、冷蔵車は-5℃前後まで、冷凍車は-30℃まで冷却できる機能を持っています。庫内には断熱材が使用されているため、外からの熱が庫内に伝わりにくく、かつ庫内の温度が外に逃げにくくなっています。加温機能の付いたタイプもあり、冷やすだけではなく温かい料理をそのまま運搬することなどもできます。
また、トラックの庫内を仕切りで前後に分け、温度帯の違う品物を扱える車もあります。冷凍品、冷蔵品、常温品のうち2つを1台のトラックで運べるため、2台で配送するよりコストダウンになったり、環境負荷を減らしたりできるメリットがあります。
――「走る冷蔵庫」としての使い方について、常温から荷を冷やすようなこともできるのでしょうか。
後藤 ー 実は弊社でも、果たして冷蔵庫と同じように使えるか検証するため、常温の飲料がどれくらいの時間で冷えるか、実験を行いました。
7月、外気温が30.9℃まで上がった日中に、冷凍トラックの庫内温度を0℃に設定し、そこに段ボールに入った500mlの炭酸飲料と2Lの日本茶を積み込み、それぞれの温度が10℃以下になるまで計測をしました。すると17時間後に日本茶がチルド(10℃以下)の温度帯に到達。炭酸飲料も20時間後にはその温度帯に到達しました。(図表1)
したがって相当な暑さの日でも、予冷をせず、積み荷も常温の状態からしっかり冷やせることがわかり、「走る冷蔵庫」として十分に機能するという結論となりました。
―― A-TRUCKの冷凍・冷蔵トラックならではの強みはなんですか。
後藤 ー 弊社のトラックの最大の特徴の一つが「よく冷える」ことです。
配送センターから各店舗や個人のお客様へ冷蔵・冷凍品を配送するときには、どんなに早くドアの開閉を行っても庫内から冷気は逃げ、外気が侵入してきます。ですから配送先が増えれば増えるほど、庫内の温度を低く保つのは難しくなります。配送のたびに温度が上昇する庫内を、素早く適切な温度に戻すには、冷凍能力の高いトラックが必要です。A-TRUCKの冷蔵・冷凍トラックなら、強力な冷凍能力により、積み荷への影響が最小限に抑えられます。
実際にA-TRUCK仕様の4トン冷凍車と一般仕様の4トン冷凍車(図表2)の配送時の温度変化を比較したデータもあります。実験では、外気温度35℃、冷凍機設定温度-20℃で条件を固定したうえで、4店舗へ配送したときの庫内の温度変化を比較しています。
トラックを30分走らせてから、エンジンを10分停止して荷下ろしのためドアを5分間開き、その後ドアを閉めて5分間で荷を店舗へ運び、再び30分走行を繰り返しました。(図表3)
すると1店舗目から2店舗目へと到着した時点で、A-TRUCK仕様の4トン冷凍車は一般仕様に比べ庫内温度が2.6℃低く、3店舗目から4店舗目に到着した際には6℃も低くなりました。(図表4)
A-TRUCKのトラックがなぜよく冷えるのかというと、4トンの冷凍車に中型や大型車用の冷凍機をつけるなど、余力を持たせてあるからです。
ちなみに「走る冷蔵庫」として使う際には、エンジンをかけたまま車を長時間停車していると、ガソリンの消費量は多くなり環境への負荷もかかります。エンジン停止中も庫内の温度を上げたくないときには、コードで外部電源(200V)につないでトラックの冷凍・冷蔵機を使用できるスタンバイ機能が付いたトラックもレンタルしています。
――さまざまなタイプのトラックがあるのですね。A-TRUCKではどれくらいの車種を用意しているのでしょう。
後藤 ー サイズのバリエーションとしては、2023年の10月に車種を増やしたこともあり、軽車両からワンボックス、1.5トン、2トン、3トン、4トン、大型まで幅広く展開しています。それに加えて、幅や長さ、冷凍能力など細かな性能の違いがあるトラックをそろえており、さまざまなニーズに対応できるようにしています。全体の台数も500台以上で、冷凍・冷蔵車というジャンルでは圧倒的な車両の種類と数を保有しているのも弊社の強みです。
―― 車種を増やす際には、どのような観点で新たな車両を選ぶのでしょう。
後藤 ー A-TRUCK仕様の新車種を導入するにあたっては、マーケットインの発想を大切に、お客様のニーズに合わせて企画や開発を行っています。
たとえば弊社では、おそらく業界でもっとも早くコンビニエンスストア専用の配送車を開発しましたが、それも大手コンビニチェーンからの問い合わせを受けてのことです。幅広い食品を取り扱うコンビニエンスストアにおいては、冷蔵品も常温品もできるだけまとめて運べるトラックが求められていました。従来の冷凍・冷蔵トラックでもマットのようなもので庫内を区切って部屋を分けることはできましたが、それではどうしても細かな温度調整ができませんでした。
そこで庫内に扉を設け、部屋ごとに繊細な温度管理ができる仕様にしたトラックを弊社で企画したという経緯があります。なおこのトラックは、台車置きが標準装備されているなど、完全にコンビニエンスストアへの配送に特化した車両であり、10年ほどかけて改良を重ねた結果、同業界からは使い勝手がよいと評価していただいています。
また、弊社の「大型冷蔵ウィング車」も、お客様が求める仕様に合わせたものです。野菜などを市場に配送する際、荷物の積み下ろしはフォークリフトで行うのが一般的ですが、間口が後部で奥行のある従来のトラックだと、フォークリフトですべての荷を運ぶのは難しくなります。そこでコンテナの側面が羽のように開くウィング車に冷蔵機能をつけた大型車を企画し、こちらも好評を博しています。
―― 利用者の方々からは、実際にどのような反応がありましたか。
後藤 ー お客様からは、「質の良い車両を持ってきてくれてうれしい」と感謝していただくことがよくあります。
弊社では、常に新しい車両をそろえることにも力を入れてきました。トラックは10年ほど使うケースが多いですが、弊社では基本的に2年半ほどで新車と入れ替えています。冷凍・冷蔵トラックは、もし故障してしまえば運んでいる荷に大きなダメージがあります。できる限り新しい車のほうが故障のリスクは低くなりますから、お客様も安心できるはずです。
また、10年も生鮮食品を乗せていると、どうしても車両に汚れやにおいがつきがちで、見た目の傷なども増えていくものです。ホテルなどで使う場合には清潔で見た目がよいに越したことはなく、そうした点も評価いただいていると感じます。
物流インフラを支えるレンタカー会社となるのを目指して
―― 今後、冷凍・冷蔵トラックの需要はさらに高まっていきそうですが、目標を教えてください。
後藤 ー 常に目指したいのが、物流波動という大きな課題と向き合い続けることです。たとえば夏にはアイスクリームなど冷凍食品の需要が伸びますが、車両が足りなければそれを運べず、消費者の元へ商品が届かなくなります。そのようなことを起こさぬために、トラックを必要な場所に供給していく体制づくりを進めていきます。具体的には全国各地に店舗を広げていき、物流の安定に貢献したいと思っています。支店が多くなれば、災害が起きた際にもいち早く支援できますから、一石二鳥です。
また、今後もマーケットインの発想を重視して開発を行うのは変わりません。現在でも、「こんなトラックはないか」という問い合わせは毎日のようにありますが、お客様のご要望に応えられる車両がなく、案件が流れてしまうケースも多いです。あらゆるご要望に対応できるような状態にしていくのが、会社としての信頼につながると考えています。
A-TRUCKなら、ほしい時に、ほしいトラックが必ずあるーーそう思っていただけるよう、トラックの種類や台数をさらに増やしていきます。
―― 冷凍・冷蔵以外にもさまざまなトラックのレンタルを行っていますが、どのように事業を展開していきますか。
後藤 ー 物流波動の解決という視点からいうと、冷凍・冷蔵トラックだけにこだわる必要はありません。専門分野はもちろん今後も変わらず尽力していきますが、クレーンやダンプといったそれ以外の領域でも、積極的に車種や台数を増やしていく予定です。
ただし課題も多く、試行錯誤の最中です。たとえば一般のトラックの市場を見ると、いわゆる「デコトラ」の人気が高く、性能に加え見た目も重視されています。そんな需要にこたえるべく、弊社でも標準車にメッキパーツを取り付けるなどしていますが、まだまだ十分とはいえません。
そうして幅広い層のお客様にA-TRUCK仕様のトラックをご活用いただき、いずれ物流インフラを支えるレンタカー会社となる。そんな未来を目指して、これからも努力していきたいです。
―― マーケットインの発想を何よりも大切に、顧客の立場で求められるトラックをそろえ続けてきたからこそ、A-TRUCKの冷凍・冷蔵トラックは圧倒的なシェアを獲得しているのだとわかりました。本日はありがとうございました!