2022.02.08
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物流コストを削減するために最適な6つの方法
近年、物流需要が高まっており、それに伴って物流コストも増加していると考えられています。企業は物流コストの構成比率を改善することで、収益の改善が期待できるでしょう。しかし具体的に、コスト削減に向けてどのような取り組みを導入しようか悩んでいる企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、物流コスト上昇の理由や削減方法などについてご紹介します。
1. 物流コストは大きく2種類
物流コストは大きく分けて以下の2種類があります。
1.1 支払い物流コスト
支払い物流コストとは、トラック、鉄道、航空機、船舶などを使用した時に支払う運賃や倉庫の利用料、包装などを社外へ委託した際にかかる委託料などのことです。
自社ではなく委託先など、社外に支払う費用の総称です。
1.2 社内物流コスト
社内物流コストは、自社内で発生するコストの総称です。「自家物流費」と呼ばれる場合もあります。社内物流費は「社内輸送費」「社内保管費」「社内梱包費」などに分類されます。
自社の人件費や倉庫の利用費なども社内物流コストに含まれます。
社内物流コストは、会計上では他の費用と混同されていることも多く、物流コストとして計算されていない場合があります。
2. 物流コスト上昇の理由
ではなぜ近年、物流コストが上昇しているのでしょうか。ここではその理由についてご紹介します。
2.1 働き手不足
物流業界でも課題になっているのが、働き手不足です。日本は少子高齢化が進んでおり、生産年齢人口が減少しています。このままだとさらに働き手不足となり、スムーズな物流業務の維持が困難になることが予測されています。
さらに、物流業界では深夜労働や長時間労働などが問題になっています。ECの需要増加などにより、運ばなくてはいけない荷物の数がどんどん増加しています。
一方で、急に人手を増やすことはできないにも関わらず、企業は物流業界の競争を勝ち抜くため、当日・翌日配送などユーザーのニーズにより応える必要性も出てきています。そのため、深夜・休日関係なく作業することが求められているのです。
働き手不足や長時間労働などの事態を解決するために、物流業務の自動化・省人化、適切な人員配置をする必要があるでしょう。
2.2 物流需要の増加
近年、通販を利用するユーザーが増えており、物流需要が増しています。さらに2020年頃から感染拡大した新型コロナウイルスの影響などもあり、外出の必要がないECサイトを利用する人が増加したといわれています。
国土交通省の発表によると、EC市場は全体で約18兆円規模に成長しました。こうしたEC市場規模の拡大に伴って、宅配便の取り扱い件数は約5年間で約6.7億個に増加しました。このように個人宅への小口配送の需要は年々増加しています。
物流需要の増加に伴うユーザーのニーズの多様化に応えるためにも、コスト見直しで業務を効率化することが求められています。
出典:国土交通省「物流を取り巻く動向について」
2.3 配送業務の負荷増加
人手不足や長時間労働などによる労働環境の悪化を解決するためにも、物流コストの見直しが求められています。適正な場所に適正なコストをかけることで、スタッフの負担を減らすことにつながるでしょう。
解決策として、配送業務の負担を減らすための物流ソリューションが効果的とされています。
例えば、配車システムや配送マッチングプラットフォームなどがあります。こうしたサービスを効果的に利用することで、効率的な配送業務を実現し、ドライバーの負担軽減にも繋がるでしょう。
また、今後は配送にドローンや自動運転車を活用することも検討されています。輸配送業務を自動化すれば、配送業務にかかる負担を軽減できるでしょう。現在の技術ではまだすべて自動化するのは難しいとされていますが、今後技術の進歩によって進化することが期待されています。そのため、今後さらなる配送業務負担削減も期待できるでしょう。
3. 物流コストの削減方法【業務見直し編】
物流コストを削減するためにはまず業務の見直しを行いましょう。どの業務にどれだけコストがかかっているのか分からなければ、削減につながらないからです。
ここでは業務を見直すことで期待できる物流コストの削減方法をご紹介します。
3.1 人件費・管理費の見直し
人件費は物流コストの中でも高い割合を占めているとされる費用です。
例えば、「ヒューマンエラーが多く、ミス対応やダブルチェックの対応が増えている」などの課題があるとします。こうした課題を解決するには、物流システムの導入などがおすすめです。
ピッキングシステムを例に挙げると、主にハンディターミナルで出荷指示書のバーコードを読み取り、記載された品物を機械が自動でピッキングすることができます。人が行うよりも迅速に行うことができ、在庫状況はリアルタイムで更新されます。そのため、人的ミスを防ぎ、人件費の削減も期待できるでしょう。
またシステム導入によって在庫管理が簡単にできるようになるため、管理費の見直しもできます。
3.2 業務フローの可視化と改善
社内体制の見直し
業務フローがしっかりしたものになるよう、社内体制の見直しも検討しましょう。
例えば、労働時間の長時間化が常態化し、環境が悪化している場合があったとします。労働時間の改善をするためには、ドライバーの1日の働き方を正確に把握する必要があります。
働き方を把握すれば業務内の無駄を発見しやすくなり、具体的な課題の発見が期待できるでしょう。課題を発見したら次は、課題ごとの解決策を見つけていきます。有効なルート設定や荷物の待ち時間の削減など一つずつ解決することで、ドライバーの労働環境改善につながるでしょう。
また「物流の2024年問題」と言われている、ドライバーの時間外労働の「年間960時間」への規制が2024年4月1日より行われます。ただし、1日や1ヶ月あたりには規制がありません。そのため、繁忙期にやむなく時間外労働を行う場合でも年間の限度時間内に収まっていれば問題ないとされています。
規制に抵触しないためにもドライバーの労働時間をしっかりと把握しておきましょう。さらにドライバーの規制だけでなく、2023年4月以降、中小企業において月60時間を超えた場合、時間外労働には割増賃金が50%かかることになりました。
こうしたコスト増加を考え、ドライバーの適正な時間管理を行うシステムを構築する必要があるでしょう。
3.3 物流拠点の集約化
物流拠点の集約化も物流コスト削減に効果的とされています。複数の拠点を持つ企業では「拠点が多いため管理費や維持費が高い」「輸送コストの割合が高い」という課題を持っていることもあります。
そこで、倉庫内の荷物の量を見直し、余裕があるかどうかを確認しましょう。どの拠点も余裕がある状況であれば、集約化することでコスト削減につながります。また、拠点を集約化すると商品も集約化されるため、トラックの積載率を上げられます。そのため、同じコストでも多くの商品を運ぶことができるようになります。
3.4 サプライヤーへの価格交渉
可能であればサプライヤーへの価格交渉も行ってみましょう。
例えば、倉庫貸し業者と交渉して保管料が下がれば年間のコストを大きく下げられるでしょう。
価格交渉の際には単に金額のことを話し合うだけでなく、サプライヤー側にもメリットがあるような状況にすれば交渉が通りやすい可能性があります。
価格交渉に加え、以下のような短期施策と長期施策を提示してみましょう。
短期施策
・競争入札などによる価格の見直し
・在庫の圧縮
・管理体制の見直し
長期施策
・作業の効率化などで得られた利益を自社とサプライヤーで分配
サプライヤー側にも利益のある仕組みを提示することで、交渉が通りやすくなるでしょう。
4. 物流コストの削減方法【ソリューション編】
物流コストの削減は、ソリューションの導入でも叶えられる可能性があります。ここでは、ソリューションを使った物流コスト削減の方法についてご紹介します。
4.1 物流システムを導入する
物流システムとは、輸送・保管・荷役・包装・流通加工の一連の工程を管理するシステムです。物流業務を一元管理することで効率的な在庫・入出庫・配送管理が可能になり、人的コストの削減や作業効率の向上、倉庫回転率アップなどが期待できます。
代表的な物流システムには以下が挙げられます。
倉庫管理システム
倉庫管理システム(Warehouse Management System:WMS)は、倉庫の物流プロセスを効率化するためのシステムです。
たとえば、商品を番号やバーコードなどで管理することができます。システム上で簡単に在庫管理ができれば、販売機会の損失などを防げるでしょう。
在庫管理システム
倉庫内の商品の在庫を管理できるシステムです。入出庫業務、配送業務、受発注業務などの管理ができ、複数ヵ所に分かれた在庫管理も可能になります。
このような業務の管理が倉庫管理システムと似ている部分もあることから「在庫・倉庫管理システム」と一緒になって提供されていることも多いです。
さらに最新のテクノロジーを利用した業務の自動化なども行われています。配達先への輸送にドローンを利用するほか、コンテナを2台連結したダブル連結トラックなどの試みがあります。
AIを導入することで業務の自動化が期待されており、日本ではまだ実用化されている技術は少ないですが、自社で導入できそうなのかはチェックしておくのがおすすめです。
こうしたテクノロジーを利用することで「人手不足の解消」「配送コストの削減」「配送時間の短縮」などが期待できるでしょう。
4.2 3PL(4PL)を利用する
3PLとは
3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)は、荷主企業が自ら物流業務を行うのではなく、第三者(サードパーティ)に荷主企業のロジスティクス業務を包括的に委託することです
近年、物流業界は目まぐるしく変化しており、対応に苦慮している荷主企業も増えています。また物流業務にリソースを取られ、本来の業務にリソースを割けないという問題も出てきています。
こうした問題を解決し、本業の製品開発や販売活動、マーケティングにリソースを投入したいという考えから、3PLの利用が増えています。
4PLとは
さらに近年、4PL(フォース・パーティ・ロジスティクス)も注目されています。物流業界では比較的新しいビジネスモデルで、物流コストなどを含めた物流問題解決のカギになるとも考えられています。
4PLとは、物流に関するノウハウを持った3PLに、ロジスティクス戦略の企画や推進も行う、コンサルティング要素が加わったソリューションです。4PLはより顧客の立場に立ったロジスティクス戦略を提案してくれます。より顧客の利益を重視し、物流コストの削減に取り組んでくれるのが特徴です。
物流業務に関わるスタッフをすべて自社で雇用している場合、荷量に関わらず人件費が発生し、倉庫を自社で管理している場合も毎月費用がかかります。
繁忙期や閑散期に必要な人員を予測して確保しなくてはいけないため、予測よりも出荷が少なかった場合は人員過多となる可能性もあるでしょう。また反対に出荷が多かった場合は、急いで人員を増やさなくてはいけません。
さらに自社で設備投資をした場合、年数が経てば再投資が必要になる場合もあります。
これらは、3PL(4PL)を導入することで適正コストで運用が可能です。繁忙期などは一時コストが上がる可能性がありますが、年間で見たトータルコストは削減できるでしょう。
5. まとめ
将来的にさらに加速するであろう労働力不足と、さらなる物流需要の増加に対応するため、企業には物流コストの削減が求められています。適切に物流コストが削減できれば、利益の確保につながるでしょう。
業務見直しとソリューションの導入などを通して業務をより効率化させることが、コスト削減につながります。また自社内で対応できない場合は、3PL(4PL)など外部への委託も検討してみてはいかがでしょうか。