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物流のコスト構造とは?内訳や比率などを解説

物流業務にはさまざまなコストが発生しています。そのため、少しでも利益を上げるにはコスト構造をきっちりと理解しておく必要があります。また近年では、労働力不足や物流量の増加により物流コストは増加傾向にあることも知っておく必要があるでしょう。
本記事では、物流コストの概要や内訳、比率などを解説します。

1. 物流コストとは

物流コストとは、物流業務全体にかかるコストのことです。供給者から需要者へモノを届ける際にかかる費用全般のことはすべて物流コストに含まれます。物流コストは大きく分けて「支払い物流コスト」と「社内物流コスト」に分けられます。

支払い物流コスト

支払い物流コストは、外注先に支払う輸送費や倉庫・設備の賃料などを指します。

社内物流コスト

社内物流コストとは、社内システムや人件費などを指します。

物流コストの細かな構造については次項で詳しく解説します。

2. 物流コストの構造

物流コストは主に以下の5項目で構成されています。

2.1 輸送・運送費

商品を輸送・運送する際に必要な運賃のことです。チャーター車両費用、自社トラックのガソリン代や減価償却費などが含まれます。具体的には以下が挙げられます。

 ・燃料費
 ・車両費用
 ・運送事業者による運賃
 ・駐車場費用
 ・ドライバーの人件費
 ・運送事業者による運賃(運送事業者を利用した場合にかかる費用です。国土交通省に提出された運賃表を基に算出されます)
 ・航空便の運賃(国内外に配送する場合の航空便の運賃です)
 ・チャーター機の運賃

自社の商品のみを輸送する専用運輸を使用する際にかかる運賃です。最大積載量・輸送距離などによって定められます。

物流コストの中でも比較的高い割合を占める項目です。そのため、コスト削減の際にはまず注目されます。

2.2 保管費

商品の在庫を保管・維持するために必要な費用です。保管費には、自家倉庫だけでなく外部の倉庫に保管する際に発生する原価として以下の2種類に分類されます。

自家保管費

自家保管費は、自社の物流センターや自家倉庫で発生するコストのことです。自家保管費には以下の項目が挙げられます。

 ・倉庫で従事するスタッフの人件費
 ・荷役機器の燃料
 ・機器修繕費
 ・消耗品費の変動荷役費
 ・倉庫の減価償却費
 ・借用倉庫などの借用料金
 ・施設保険料

支払い保管費

支払い保管費は、外部の営業倉庫を賃貸する際にかかるコストです。

・保管料
・支払い荷役料
・手数料
・外注費
・販売先センター使用料

倉庫の賃貸にかかる「賃貸料」、倉庫で保管する商品の「保管料」、商品の出し入れを行う際の「入出庫料」などが一般的な費用です。外部倉庫を利用する場合は、保管する荷物の量や広さによってコストが変動します。

外部倉庫は保管するスペースの広さによってコストが変動する坪貸し保管もあり、坪貸し保管は契約坪数×契約坪単価で算出されます。

2.3 荷役費

荷役費は倉庫や物流センターなどから荷物を出荷する際に発生するコストです。主に以下の項目が挙げられます。

入庫費

倉庫や物流センターなどに入庫する際に必要な費用です。1ケースの単価×数量で算出されます。

出庫費

倉庫や物流センターなどから出庫する際に必要な費用です。入庫費と同様に1ケースの単価×数量で算出されます。

梱包費

倉庫や物流センターでの梱包にかかる費用です。

仕分・ピッキング費

商品を仕分けする際に必要な費用です。

輸出時の諸経費

荷物を輸出する際にかかるコストです。通関料、湾港施設利用料、関税、取扱手数料、ドレージ料金などが該当します。

荷役費は作業量によって必要な時間が異なるため費用も変動するため、効率化を図ればコスト削減しやすい項目であるといえます。

梱包費

梱包費は、商品を梱包するために必要な費用です。主に以下の費用が該当します。

 ・ダンボール
 ・発泡スチロール
 ・紙
 ・緩衝材
 ・紐やテープ

さらに商品を木箱や木枠、紙箱に詰める作業なども梱包費に該当することが多いです。

2.4 加工費

加工費は特定の事業で発生する費用です。例えば以下の費用が挙げられます。

 ・値札付け
 ・タグ付け
 ・パッキング
 ・プレス加工
 ・シュリンク
 ・ハンガーアップ

上記は、アパレル業界で発生する費用です。また商品をギフト包装したり、商品を組み合わせてセットにしたりする作業も含まれます。

その他にも、建設業で使われる組み立てを必要とする建築資材や機械などの組み立ても加工費に該当します。

2.5 物流管理費

物流を管理する際、入出荷や伝票発行業務などの費用です。ただし、輸送費にドライバーの人件費を含まない場合はここに含めることもあります。物流管理費は「社内物流費」と「調達物流費」に分けられます。

社内物流費

社内物流費は、自社内で発生する物流コストの総称です。自社の人件費や自社の輸送費・諸経費・保管費などが含まれます。自社所有の倉庫やトラックがある場合は、社内物流費に含まれます。

調達物流費

原材料を調達する際に必要なコストです。物流プロセスを管理する観点からみると、他の原価項目と区別した方がいいとされています。

3. 物流コストの現状

物流コストの内訳を把握したら、次は比率を確認してみましょう。

3.1 物流コストの比率

日本ロジスティクスシステム協会(以下JILS)が実施している「物流コスト調査報告書(2020年度版)」によると構成比率は以下のようになっています。

全業種における支払い形態別構成比

 支払い物流費 86.4%
 社内物流費(自家物流費) 13.6%

全業種における物流機能別構成比

 輸送費    55.2%
 保管費    15.7%
 その他(包装・荷役・物流管理費) 29.1%

形態別にみると、物流子会社(13.3%)を含む社外の業者への支払いが8割を超えているとされます。さらに機能別にみると、輸送費が半分以上を占めていることが分かりました。

3.2 物流需要とともにコストが上昇中

物流コストの増加には近年の物流需要の増加が関係しているとされています。

国土交通省が発表した「物流を取り巻く動向について」によると、近年、通販を利用するユーザーが増加しています。さらに2020年頃から流行した新型コロナウイルスの影響もあり、外出しなくても買い物が可能なECサイトを利用する人が増えていると考えられています。

国土交通省の発表によると、EC市場は全体で約18兆円規模となっています。さらにEC市場規模の拡大に伴って、宅配便の取り扱い件数は約5年間で約6.7億個までに増加しました。個人宅への小口配送の需要は年々増加しており、それに伴って物流コストも上昇していると考えられています。

また物流需要の増加とは反対に労働人口は減少の一途を辿っています。国内では少子高齢化が進んでおり、年々生産年齢人口が減少しています。このままでは働き手不足になることは確実とされており、今までのような物流が困難になることが予測されているのです。

こうした現状を受け、各社は物流コスト削減についての対策が求められています。

出典:国土交通省「物流を取り巻く動向について

4. 物流コストを最適化するために

では具体的に物流コストを削減するためにはどんな対策をとればいいのでしょうか。ここでは物流コスト最適化のための方法をご紹介します。

4.1 倉庫内作業のルールを見直す

倉庫内作業の効率化を図るには一度、ルールを見直してみましょう。これまで明確化されていない部分があればきちんと数値化して、可視化します。

また新しいルールを導入する際には、マニュアルなどをきちんと構築・作成し、スタッフに周知することが大切です。マニュアルがきちんと作成されていれば、社内での認識が統一されやすいでしょう。そうすれば属人化を防ぐことができ、トラブルの防止につながります。

また万が一トラブルが起きた場合も、マニュアルがあれば対処方法が分かります。さらに新しいスタッフに説明や研修を行う場合でも、マニュアルがあればすぐに対応できるようになるでしょう。

ただし、新しいルールの作成やマニュアル作成にはかなりのリソースを割く必要があります。どのくらいの負担になるのか、作成完了までにどのくらいのリソースを割く必要があるのかという部分もきちんと計算しておきましょう。

4.2 物流管理システムを導入する

物流コストの削減には物流管理システムの導入も効果的とされています。物流管理システムとは、輸送、保管、荷役、包装、流通加工を一元管理するシステムです。

物流業務を一元管理することにより、在庫・入出庫・配送管理を効率的に行えます。代表的な物流管理システムには以下があります。

倉庫管理システム

倉庫管理システムは、倉庫内の物流プロセスを効率化するためのシステムです。

商品を番号やバーコードなどで管理できるようになります。番号やバーコードなら簡単に在庫状態を把握できます。さらにリアルタイムで在庫状況が分かるので、機会損失を防止できるでしょう。

在庫管理システム

倉庫内の在庫を管理するシステムです。入出庫業務、配送業務、受発注業務などの管理が可能で複数の場所に分かれて保管された在庫の管理もできます。

倉庫管理システムと内容が似ている部分もあるため、「在庫/倉庫管理システム」として一緒に提供されていることもあります。

物流管理システムを導入する際には、システムの導入費用だけでなく保守管理費などのランニングコストも計算しておきましょう。特に大規模なシステムになると、定期的な点検や部品の交換なども必要になります。

これらすべての費用を計算し、費用対効果が見込めるかどうかを確認しましょう。

4.3 共同配送の仕組みを作る

共同配送とは、複数の卸売業者などが同じ配送先の荷物を共同で配送する仕組みです。トラックの積載率を上げることができるため、コストを削減しやすいでしょう。

ただし、複数の業者が関わることになるため、料金や配送ルートなどの問題が生じないようにあらかじめ取り決めを行う必要があります。

4.4 物流拠点の見直しを行う

物流拠点の見直しを行うことで、物流業務が効率化しコスト削減に繋がります。

例えば、大目に在庫を抱えるため、少し大きめの倉庫を拠点としていたが、在庫数を減らすよう方針が変わったにも関わらず、引き続き同拠点で稼働し続けていては無駄な管理コストがかかってしまいます。

自社の状況や業務フローなど、必要に応じて物流拠点を見直し、拠点を移転することも最適化の方法です。

4.5 物流アウトソーシングサービスを利用する

物流課題を解決できる方法の一つが物流アウトソーシングサービスです。

物流アウトソーシングサービスとは、物流業務を物流会社に委託することを指します。また、3PL(サードパーティ・ロジスティクス)とは、物流の業務全般を第三者が請け負うこととされています。物流業務を外部に委託することで人手不足、保管スペース、コスト削減などさまざまな課題の解決につながります。

物流アウトソーシングサービスを利用すれば、これまで物流業務に割いていた人員を他の業務に振り分けることもできるでしょう。

例えば、商品開発やマーケティングなど自社にとって重要な本来の業務に人員を集中することができます。

アウトソーシングサービスを利用すれば一時的にコストが上がる可能性もあります。しかし、長期的にみれば配送コストなどを抑えられるケースも多くあるでしょう。

5. まとめ

物流コストはさまざまな要素から構成されています。見直しを行う際には、どのコストがどのくらい使われているかを知ることが大切です。また、近年では物流需要がますます増加しているため、物流コストも上昇する傾向にあるため、物流に関わる企業は物流に関するコスト削減を求められることが多いでしょう。

ユアロジでは、様々な手法で物流業務のコスト削減に取り組むことができます。物流のことでお悩みであればぜひお問い合わせくださいませ。

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