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物流業界の課題と解決策|今すぐ実施すべき対策とは

近年、ECサイトやその周辺のサービスの増加に比例しモノの配送量が増えたことから、物流業界の市場規模や需要が拡大しています。一方で物流業界も今までにないような課題に直面しているとされます。しかし、なかなか解決策が見つからず、苦悩している企業も多いのではないでしょうか。

本記事では、物流業界が抱える課題や解決策、今すぐに実施したい対策などをご紹介します。

1. 物流業界が抱える課題

ECサイトを利用する人は増えており、市場規模もますます大きくなっています。一方でさまざまな課題に直面しています。

1.1 人手不足

人手不足は物流業界の中で最も大きな課題とされています。

特にドライバー不足が深刻化しており、長距離を走ることも多いトラックドライバーの労働環境は過酷であることが多く、求人が集まらない状況にあります。また現役のドライバーの平均年齢も上がっており、ベテランの退職後、次世代の人員が不足されることが予想できます。

また、運送ドライバーにおいては、2024年に働き方改革関連法が施行されることで、時間外労働時間の上限が960時間に制限される影響で、今までもらえていた時間外手当がもらえなくなり、収入減少につながる恐れがあります。そのため、給与面の不安を抱えることとなり、現役ドライバーの離職増加や求人応募数の減少も考えられます。

今後日本は、少子高齢化によりどの業界でも働き手不足が叫ばれています。そのため、今後ドライバーの平均年齢が上がり、新しいドライバーが増えない状況が続けば、運ぶ荷物は増えるのに運べない状況を招く可能性があるでしょう。

1.2 深夜・長時間労働

人手不足の原因の1つでもあるのが、深夜・長時間労働などの労働環境の悪化です。荷物の数が増えているだけでなく、「翌日配送」や「送料無料」などを売りにしている企業の増加などから、物流業界は低コストのわりに重労働が課せられているとされています。時には深夜まで長時間に亘って働かざるを得ない状況もあるのが現状です。

1.3 小口配送の増加

近年、ECサイト利用者増加の影響から、個人宅への小口配送が増加しています。小口配送は店舗や企業などへ配送する大口配送と比べると、多くの人手を必要とします。そのため小口配送の増加は、労働環境の過酷化と人手不足にますます拍車をかけるといわれているのです。

さらに個人宅への配送は、休日や夜間の時間帯を指定されることも多くあります。顧客への利便性を高めることは顧客満足度向上につながりますが、それに比例してドライバーへの負担が増えてしまいます。

1.4 配送スピードの向上

ECサイトが増えたことにより、配送品質の競争も激化しています。そのため販売者側は「翌日配送」「即日発送」など、配送スピードの向上を売りにすることも増えました。時には顧客に有料の会員になってもらい、その見返りとして配送スピードの向上を売りにしていることもあります。

顧客側としては配送スピードの向上は利便性が高く魅力的ですが、ドライバー側からすると大きな負担となります。また一度迅速な配送に慣れた顧客は、荷物が遅れると「なぜ遅いのか」と不満を募らせることもあるでしょう。その結果、ドライバーや運送会社にクレームが発生する事態となり、ますます負担が増えてしまいます。

1.5 再配達による非効率化

個人宅への配送は、不在などによる「再配達」になることも珍しくありません。荷物を運んでも受取人がいなくては配送が完了しないため、何度も足を運ばなくてはなりません。国土交通省の発表によると、荷物の個数の内約15%が再配達になっているようです。さらに再配達になった荷物のうち約4割が「配達されることを知らなかった」という調査結果となっています。いつ入荷されるかわからない商品はもちろんのこと、自分で注文した商品がいつ配達されるのかということに顧客は思ったより関心を持っていないことがわかります。

そのため再配達はECサイト配送の場合に起こりやすいとされ、配送件数以上にドライバーの負担になっていると考えられています。またECサイトは競争を勝ち抜くため、荷物を「送料無料」としていることも多くあります。送料無料となっている荷物でも、実際は配達コストが発生しています。再配達1回ごとにコストがかかり、さらに二酸化炭素排出量の増加や労働生産性の低下も考えられるでしょう。

参考:国土交通省「宅配便の再配達削減に向けて」

2. 物流課題の解決策

物流業界では多くの課題を抱えていますが、これらの問題を解決するためには、どのような解決策が必要になるのでしょうか。

2.1 物流システムの導入

1つめは「スマートロジスティクス」と呼ばれる最新技術で効率化する方法です。

物流は「輸送」「保管」「荷役」「梱包」「流通加工」という工程がありますが、これらをシステム化できれば大幅な業務効率化が可能になります。

アナログ作業のデジタル化、配車ルートの最適化、荷物のリアルタイム追跡などがシステム化すれば実現できるでしょう。荷物を待つ時間や配送にかかる時間が短くなれば、ドライバーの負担も減ります。またスマートロジティクスにより、顧客側も荷物の配送状況を簡単に把握できるようになれば、顧客満足度向上も期待できます。

2.2 物流アウトソーシングサービスの利用

システム化するほどの予算がない場合は、物流アウトソーシングサービスを利用することも1つの手段です。

物流アウトソーシングサービスとは、物流業務を委託することができるサービスのことです。物流業務全般を請け負ってくれるため、自社に最新のシステムを導入する必要がありません。また、外部のリソースを用いることにより、自社では難しかった高品質の物流サービスを提供できます。外部に委託することでEC市場の拡大など、ビジネスの幅を広げられる可能性もあるでしょう。

さらに、物流業務をアウトソーシングで利用する場合、これまで物流業務に割いていた人員を他の業務に振り分けることもできます。

例えば、マーケティングや商品開発など自社の発展に欠かせない本来の業務に人員を集中することができれば、より良いサービスや商品開発ができるでしょう。アウトソーシングサービスを利用すれば一時的にコストが上がるかもしれませんが、長期的に見れば配送コストなどを抑えられるケースも多くあります。

2.3 物流拠点を増やす

3つ目は物流拠点そのものを増やす方法です。

物流拠点が増えることで、近くの配送センターから荷物を送ればよいため、長距離・長時間の配送がなくなるでしょう。ただし、他の手段に比べてコストがかかるため、慎重に検討する必要があります。

「共同配送」も一つの手段です。共同配送とは、2社以上が保管庫や輸送手段を共通して使うことで、倉庫や物流センターなどを共同施設として使うことにより配送の効率化を図れます。

今までは同じ配送先であったとしても配送を頼んだ業者が異なれば、それぞれ違うトラックを使って輸送が行われていました。共同倉庫を使いそこに複数の業者が商品を保管するようになれば、同じ配送先の荷物は1台のトラックで配送できます。こうした共同配送はドライバー不足に対応できるだけでなく、積載率向上にもつながります。

3. 物流業界が取り組むべきこと

物流業界の課題を解決するには、業界全体での取り組みも重要です。ここでは物流業界が取り組むべき3つの方法をご紹介します。

3.1 積極的なDX推進

物流業界が真っ先に「DX(デジタルトランスフォーメーション)」に取り組むべきでしょう。

物流をシステム化・デジタル化し、輸送状況やコストなどを「見える化」することで、より効率的な業務が行えます。また、物流システムを規格化・標準化することで、収益力・競争力の増加なども期待できるでしょう。DXでは、以下のようなシステムの導入がおすすめです。

倉庫システムの構築

倉庫内にロボットを導入したり、梱包やパレットサイズの標準化をしたりすすことにより、倉庫内作業を効率化出来ます。

商品管理のデジタル化

各種伝票などの書面のデータ化・デジタル化をすることは、業務効率化・スピード化に欠かせないとされています。デジタル化し、情報を一元管理・共有することで在庫・配送・検品などの業務が格段に速くなるでしょう。さらに、AIを積極的に導入することで、需要予測などもできるようになり、より効率的な商品管理ができるようになります。

データを一元管理・共有することによる物流業界全体でのリソースの有効活用なども挙げられています。こうしたDXの実現により、一企業だけでなく業界全体の在り方の改善が見込めるでしょう。

3.2 業務の自動化

中長期的な面での解決策として業務の自動化・省人化が挙げられます。

近年多くの現場で業務の自動化が進められていますが、物流業界は遅れているといわれています。その原因として考えられているのが、導入・維持費用の高さと作業者の存在です。既存の自動化技術はコストがかかるため、なかなか新しく導入しようとする企業が少ないとされています。加えて日本では物流現場で働くパートやアルバイトなどの作業者の人数が多く、生産性が高いとされているため、自動化よりも人が行うことによってコストが安くなる状態になっているのです。

しかし、新型コロナウイルスの影響などによりECサイトの需要や非接触型のBtoCサービス需要が高まり、今後小売店は対面型店舗の経営を見直すとされています。さらに倉庫内で作業者が密集する状態も避ける必要があり、各社ともに自動化や省人化への関心が高まっているのが現状です。こうした業務の自動化は以下のような手段が挙げられます。

自動倉庫

倉庫での作業である入出庫・保管・搬送の自動化です。導入時、建物のからシステム開発までトータルで設計する必要があるため、大きなコストがかかります。ある程度資金に余裕のある企業向けといえるでしょう。

納品書入力

 ・一括納入明細書の作成
 ・データ訂正
 ・受注業務
 ・ピッキングリスト発行
 ・FAX受注の効率化

これらの手作業もしくは人間が行っていた作業をロボット(RPA)が行うことで、業務をより効率化できます。また業務の作業時間がわかりやすくなるため、費用対効果も計算しやすいでしょう。

さらに最新のテクノロジーを利用した業務の自動化も行われています。

例えば、最終的な配達先への輸送にドローンを利用する試みや、コンテナを2台連結した「ダブル連結トラック」などが登場しています。AIを導入することで、さらなる業務の自動化が叶えられるでしょう。

日本ではまだ実用化に至っているものは少ないですが、今後どのような技術が出てくるのか、自社で導入できそうなのかはチェックしておく必要があるでしょう。このようなテクノロジーを利用することで、「人手不足解消」「配送コスト削減」「配送時間短縮」などが期待できます。

3.3 社内体制の見直し

社内体制の見直しも必要です。

労働時間が長く、環境が悪化しているなら時間を見直しましょう。そのために、ドライバーの1日の働き方を正確に把握できなくてはいけません。働き方を把握することで、業務内の無駄を発見し、より具体的な課題の発見につながります。

課題を発見し、有効なルート設定や荷物の待ち時間の削減など、課題ごとに解決策を見つけていきましょう。ひとつずつ解決策を提示することで、ドライバーの労働環境改善、働き方改革につながります。

特に企業が知っておきたいこととして、2024年度からドライバーの時間外労働が「年間960時間」に規制されます。ただし、1日や1ヶ月あたりとしては規制がないため、繁忙期にやむなく時間外労働を行った場合でも年間の限度時間内であれば問題ないとされています。そのためドライバーの労働時間をしっかりと把握し、年間の時間外労働時間をきちんとコントロースできるようにしておく必要があるでしょう。

また時間外労働上限規制だけでなく、2023年4月から中小企業において月60時間を超えた場合の時間外労働は割増賃金が50%かかります。こうしたコスト増加を考え、ドライバーの適正な業務管理や時間管理を検討する必要があるでしょう。

4. まとめ

物流業界は人手不足や労働環境の悪化などさまざまな課題を抱えています。これらを解決するためには、システムの導入や業務の自動化、社内体制の見直しなどを行う必要があるでしょう。

しかし、システムの導入や自動化は、それなりのコストがかかります。そのため、物流アウトソーシングサービスの利用や、宅配便の再配達削減に向けて物流業務を外部に委託する手段も活用しましょう。

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