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物流システムの種類や機能、解決できる課題について

食品、雑貨、設備、機械などさまざまな商品を消費者のもとへ届ける物流。しかし、商品を消費者に届けるには、完成した商品、商品を製作するための資材・部品の保管・管理だけでなく、倉庫・物流センターからの出庫管理や荷物の積み下ろし、流通加工など、さまざまな作業が発生します。現在、人材不足もあり多くの企業でこれら物流業務の改善が急務です。

そこで今回は、物流業務の課題解決施策のひとつである物流システムについて、その概要、種類、機能を見たうえで、物流システムが解決できる課題について解説いたします。

1. 物流システムとは

現在、物流業界が抱える多くの課題を解決する一つの手段が業務効率化です。業務効率化が実現すれば、従業員一人ひとりにかかる負担も軽減され、人材不足解消にもつながります。そこで、これらの課題を解消する施策として注目を集めているのが物流システムです。

そもそも物流には、「調達」「生産」「販売」「回収」といった機能があります。これら機能はそれぞれが独立したものではあるものの、別々に管理していては、作業がぶつ切れになってしまい円滑な物流が実現しません。そこで、これらの機能を一括で管理するためのシステムが物流システムになります。

2. 物流システムの種類

物流には様々な機能があり、物流システムもそれらの機能に合わせいくつかの種類が存在します。その中から、「倉庫管理システム」「配送管理システム」「EDI(電子データ交換)」「マテリアルハンドリングシステム」の4つをご紹介します。

2.1 倉庫管理システム(WMS)

WMS(Warehouse Management System)とも呼ばれる倉庫管理システム。倉庫や物流センターでの商品のほか、商品を製作するために使われる資材や部品などの管理を行うためのシステムです。

倉庫管理システムの主な機能は、「入庫」「出庫」「在庫」の管理で、これら3つの管理を適切に行うことで商品の供給バランスの調整が実現します。

従来、「入庫」「出庫」の管理はすべて人の手を使って行われていました。そのため、リアルタイムでの在庫管理が行えず、急遽出庫が必要になった場合、トラブルで入庫が遅れてしまった場合などの対応が困難でした。しかし、倉庫管理システムがあれば、倉庫の在庫がリアルタイムで把握できるため、そうしたトラブルにも適切な対応が可能になります。

また、倉庫管理システムでは、1つの倉庫だけではなく、複数の倉庫や物流センターの在庫管理を一括で行うことも可能です。例えば、A工場で資材不足が発生した際、資材の在庫に余裕がある倉庫からすぐにA工場に出荷するような対応が行えます。

さらに賞味期限のある生鮮食品の管理、少量・多品種商品の管理など、アナログでは手間がかかりミスの起こりやすい在庫管理も適切に実現。ロスを防ぎつつ業務効率化に大きく貢献します。ほかにも「入庫」「出庫」管理のデータが蓄積されていくことで、需要予測が行えるようになる点も倉庫管理システムの大きなメリットといえるでしょう。

2.2 配送管理システム(TMS)

TMSとは、Transport Management Systemの略で、日本語では配送管理システムもしくは運送管理システムと訳されます。「配車」「配送計画」「運行の進捗管理」「積付」のほか、「運賃計算」「請求書発行」なども管理できるシステムです。

物流業務の中でも配送は、「どのルートを選択すれば効率的かつ迅速に荷物を届けられるか」「配送車にどのような形で荷物を詰め込めば積載効率が向上するか」など、ドライバーの勘や経験に頼る部分が大きい業務です。そのため、どうしても業務が属人化してしまい全体の効率化は進みません。

配送管理システムを使い、荷物の量や天候、交通情報などをもとに、

・出庫方法の選定

・配車トラックの手配

・配送ルートの選定

・配送時間変更時の対応

などを行います。そうすることで、誰でも最適な方法、ルートでの配送が可能です。

さらに、運行状況をリアルタイムで把握し、事故渋滞時のルート変更も臨機応変に指示ができ、渋滞時のロスを最小限に防ぎます。ほかにも配送計画データと運輸システムの連動による自動運賃計算が可能です。運行データをリアルタイムで取得し、ドライバーの帰社を待たずに日報や請求書の作成も実現でき、大幅な業務効率化につながります。

2.3 EDI(電子データ交換)

EDIとは、Electronic Data Interchangeの略称で、電子データ交換と訳されます。配送の際に企業間で発生する「受発注」「出荷・納品」「請求」「支払い」などすべての取引情報を、オンラインを使い、電子データとして交換するものです。

一般的に企業間での取引は、次のような手順で進みます。

①顧客となる企業が商品を販売する企業に対し発注書を送付・受注
②商品を販売する企業は受注した分の商品と納品書を用意したうえで発送
③顧客へ納品が完了し、商品に問題がなければ請求書を発送。請求書は納品確認後すぐの場合もあれば相手先の請求日に合わせて発送する場合もあります。
④入金を確認後、領収証を作成して顧客へ送付

1回の取引で多くのやり取りが発生します。これらをすべて手作業で行うとなると、記載した以外にも、「入金確認」「在庫調整」「やり取りの記録」などやるべき業務量は膨大です。その業務をオンライン上で実現させるのがEDIで、紙を使わないことで印刷・郵送(FAX)の手間もなくなり、手間の軽減に加えやり取りにかかる時間の短縮も実現します。

また、一連の業務はすべてデータとして保存されるため、決算の段階になってから関連書類を集める手間もなく、速やかな決算が可能です。

2.4 マテリアルハンドリングシステム(MHS)

マテリアルハンドリングとは、倉庫や工場、物流センターで、「台車」「パレット」「フォークリフト」「ベルトコンベア」などの機器を使い、物を移動させることです。マテリアルハンドリングシステムはその移動を管理するもので、運搬管理と訳されます。

これら機器はそれぞれに異なる役割を果たしますが、管理されていない状態で稼働させてしまうと業務効率が悪くなるうえ、事故につながるリスクも高まります。そのため、倉庫や工場内でこれらの機器を適切に扱い、効率化を実現するためには一括で管理しなくてはなりません。その管理を実現するのがマテリアルハンドリングシステムです。

例えば、商品を製作するために入荷した資材を保管する場所が3か所ある場合、手作業ではどこに保管すべきかがすぐにわからないケースも少なくありません。マテリアルハンドリングシステムを使えば、どこが空いていて、どこが満杯になっているかをリアルタイムで把握し、適切な保管場所を指示します。

また、倉庫内でほかに荷物を運搬している機器と接触がないよう、最適かつ最短ルートの提示も可能です。これらにより倉庫や工場内での荷物移動が最適化され、事故を防ぎ効率的な業務の実現につながります。

3. 物流システムで解決できる課題

物流システムの主な種類を見てきましたが、実際に物流システムを導入するとどのような課題の解決につながるのでしょうか。

3.1 無駄なコストを削減

物流システムの導入で解決できるひとつめの課題は、無駄なコストの削減です。それぞれのシステム別に見ていきましょう。

倉庫管理システム導入によるコスト削減

倉庫管理システム導入により、「入庫」「出庫」「在庫」の管理が適切に行われるようになれば、過剰在庫や資材、部品を発注するタイミングのずれなどがなくなります。これにより、常に適正な在庫調整が可能になるため、不要な発注や過剰在庫による無駄なコスト発生の抑制が可能です。

配送管理システム導入によるコスト削減

配送管理システム導入により、積載効率の向上や、常に最短ルートでの配送が可能になります。その結果、無駄に配送車を多く出す必要もなくなり、ガソリン代や無駄な運送費の削減につながるでしょう。

EDI導入によるコスト削減

EDIを導入し、これまで紙で行っていた取引先とのやり取りが電子化されれば、紙代、印刷代などにかかる経費や、情報の取りまとめにかかる時間や人件費の削減が可能です。

マテリアルハンドリングシステム導入によるコスト削減

マテリアルハンドリングシステムを導入すれば、倉庫や工場内でフォークリフトやベルトコンベアなどの無駄な稼働が無くなり、稼働効率が高まります。その結果、これらの機器を稼働させるコスト削減が実現するでしょう。

3.2 人材不足を解決

物流システム導入による2つ目の課題解決は人材不足です。こちらもそれぞれのシステム別に見ていきます。

倉庫管理システム導入による人材不足の解決

倉庫管理システムを導入すれば、複数の倉庫、工場の連携も可能になるため、一人で複数箇所の管理が行えます。これにより、それぞれの倉庫や工場へ別々に人員配置する必要がなくなり、人材不足解消につながるでしょう。

配送管理システム導入による人材不足の解決

配送管理システム導入により、適切な配車計画が実現します。「配送ルートの選定」「配送時間変更時の対応」などの機能で、利益を上げつつドライバーの人数も増やさなくても稼働が可能です。

EDI導入による人材不足の解決

納品書や請求書の発送は取引が多い企業の場合、月に3桁を超えることも珍しくありません。それだけの枚数を印刷、封筒詰め、切手貼り、郵送するには、複数人で1~2日はかかってしまうでしょう。これらの作業がEDI導入によってなくなれば、一人の従業員がわずかな時間で完了させられます。

マテリアルハンドリングシステム導入による人材不足の解決

配車管理システム同様、マテリアルハンドリングシステムの導入で倉庫、工場内での移動にかかる人員を最低限に抑えられるため、人材不足解決に大きく貢献します。

3.3 従業員の負担をなくす

3つ目は従業員の負担軽減です。これまで手作業や従業員の経験、勘に頼っていた物流の業務がシステム導入により、自動化・デジタル化されて大幅な効率化が進みます。その結果、従業員の負担が減り、生産性の高い業務に集中することで生産性向上も期待できるでしょう。では、それぞれのシステムごとに従業員の負担軽減ポイントを見ていきます。

倉庫管理システム導入による従業員の負担軽減ポイント

「入庫」「出庫」「在庫」管理業務の多くが自動化され、従業員がひとつひとつ手作業で台帳に記載する手間が軽減されます。

配送管理システム導入による従業員の負担軽減ポイント

運行データのリアルタイム取得により、ドライバーは帰社してから日報を作成する必要がなくなります。その結果、ドライバーの長時間労働が緩和され、負担軽減につながるでしょう。

EDI導入による従業員の負担軽減ポイント

手書きによる納品書、請求書、領収証の作成が必要なくなり、大幅な負担軽減が実現。その分の時間をより生産性の高い業務に割り振れるようになります。

マテリアルハンドリングシステム導入による従業員の負担軽減ポイント

マテリアルハンドリングシステムの活用により、倉庫・工場内での物の移動がスムーズになります。システムが利用計画を立案することで、従業員が手作業で機器の管理する必要がなくなり負担は大きく軽減されるでしょう。

3.4 リスクやミスを減らす

人の手による作業にはミスがつきものです。それが時には大きなリスクとなるケースも少なくありません。具体的には次のようなリスクやミスの軽減につながります。

倉庫管理システム導入によるリスク・ミスの軽減

「入庫」「出庫」「在庫」管理をシステムによって行うため、二重発注や在庫ロスといったミスが大幅に軽減されます。また、これらのミスが軽減されることで、企業が経済的な損失をするリスクも軽減されるでしょう。

配送管理システム導入によるリスク・ミスの軽減

最適な配送ルートが配送管理システムよって指示されるため、遅配や配送ミスが軽減されます。これによりクレーム案件が増えるリスクも軽減されるでしょう。

EDI導入によるリスク・ミスの軽減

納品書、請求書、領収証がすべて自動で作成され、電子データとして送付されるため、送り忘れのミスが軽減されます。その結果、入金日に入金されないといったリスクが軽減するでしょう。

マテリアルハンドリングシステム導入によるリスク・ミスの軽減

フォークリフトを使いたいときにすべて出払っている、パレットの枚数が足りないといったミスは軽減されます。また、倉庫・工場内で機器同士の衝突による事故リスクも軽減されるでしょう。

4. まとめ

現状、属人性の高い業務の多い物流。しかし、物流システムを導入することで、大幅な業務効率化やミスの軽減、従業員の負担軽減を実現し、人材不足解消にもつながります。

もちろん、すべての企業がすべてのシステムを導入すればよいわけではありません。自社が抱える課題を明確にし、どの部分をシステム化すれば効率化が進むのかをしっかりと検討したうえで導入を進められることがおすすめです。

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